シンガポールへ転勤がきまった山田さんの家捜しを例にとって、シンガポールの賃貸住宅選びのポイントや注意点をお話します。
第1回 築10年以上の物件は要注意
転勤前の出張ついでに住宅探しを始めた山田さん。経験豊富な不動産業者などの意見を参考に家捜しを始めました。
「妻と子供2人の4人家族なので3LDKで便利な場所を探したい」
「では、3ベッドルームで便利な場所を何軒かお見せしましょう。オーチャード近辺は他の場所に比べると割高になります。家賃は立地のほか、広さや築年数によって決まってきますし、コンドミニアムの規模やプールなどの設備によっても違ってきます。私どもでは築10年以上たっている物件はおすすめしません」
「何でですか?」
「日本では10年くらい経ったものでも大丈夫ですが、シンガポールの場合、気候や建築方法などが違うため、痛み方が激しく、日本の倍くらいのスピードで傷むようです。そのため、築10年以上の物件は水漏れなどいろいろな問題が出てくる可能性が高いんです。しかし、一方で新築物件も工事終了前から入居が始まる可能性が高いため、入居後も工事が続くことが結構あり、状態が落ち着くまでに半年から1年くらいかかるので、お子様が生まれたばかりの方やこれから出産を控えている方はできたばかりの物件は避けたほうが無難でしょう」
「出来てから2,3年くらいのものが良いということですか?」
「一般的に言ってそれくらいのものが良いでしょう。10年前後より新しい物件であれば、状態によってはお選びいただいても問題はないと思います」
第2回 日本人に人気のリバーバレー付近の大型物件
さっそく不動産屋さんに何件か物件を案内してもらうことにします。最初に訪れたのは日本人に人気のエリア、リバーバレー・ロード沿いの大型コンド。
「この地区はオーチャードからもさほど遠くなく、日本のスーパーマーケット「明治屋」も近くにあります。大規模プロジェクトが多いことから、日本人に人気のエリアのひとつになっています。日本人学校のバスルートにもちゃんと入っていますし、奥様にすぐにお知り合いができるように日本人の多いところを選ばれる方も多いことから人気のひとつになっています」
「ひとつのコンドの中に何棟もあるんですね。プールもとっても大きい」
「そうです、大規模なプロジェクトの中にはミニマートとよばれるちょっとしたコンビニがあったり、テニスコートやプール、ジムといったファシリティーが充実していることも日本人の方に好まれる理由のひとつです」
さて、家主さんのエージェントに家の中を見せてもらいましょう。
「家主さんとエージェントとは違うのですか?」
「シンガポールでは投資目的でコンドをもっている方も多く、近隣諸国在住の家主も多いです。家主さんのほとんどは個人が多いため、エージェントに賃貸のすべての業務を任せています。法人家主の物件の場合は、個人家主の場合と比べてテナントに対する対応は安定的な傾向がありますが、個人家主の場合は、日本と違って賃貸借契約を規制する強行法規がないため、契約書がすべてとなることを理解してください」
第3回 シンガポールのコンド
「ここがリビング、ダイニングです」
「入ってすぐにリビング・ダイニングなんですか。日本のような玄関はないんですか?」
「最近のコンドには日本のマンションのようなアールコープがついているものもありますが、シンガポールの場合、いきなりリビング・ダイニングになっている間取りが多いんです。」
「でも床が大理石なんてすごいですね」
「大理石ではなくタイルのものもありますが、ほとんどが石張りです。この石はコンクリートのスラブに直接貼ってありますから、音はかなり響きます。例えば、スプーンをおとしただけで、下の階に音が伝わってしまうということを理解していてください。」
「寝室はどうなっているのですか?」
「板張りになっていますね。これも先ほどの大理石と同じように直接コンクリートスラブに貼り付けてあるので、音は日本のマンションより伝わりやすいです」
「あとは、どんなところが日本のマンションと違いますか」
「まず、換気扇。日本の換気扇は強制換気になっていますが、シンガポールではほとんどが油こしのために空気を循環させるだけです。デザインは強制換気のようになっていますが、ダクトが外に通じていないものがほとんどですので、魚はレンジの上では焼けません。ガスは、都市ガス(City Gus)とプロパンガスのエリアが混在しています。プロパンガスの場合は、大抵キッチンキャビネットの下にその置き場があります。通常は残量メーターがついていませんので、二本買って一本はユーティリティーに保存している人も結構いるそうです。ガスが途中でなくなった場合、プロパンバス置き場の扉の内側に連絡先がありますので、そこに連絡すると20分から1時間くらいで配達してくれます。」
第4回 浴 室
「次に浴室を見てみましょう。シンガポールは給湯設備のほとんどが電気温水器で、浴室の天井裏に設置されています。日本のように冬場に大量のお湯を使用することもなく、ほとんどの人達がシャワーだけで生活する傾向があるため、バスタブは普通の大きさがあるのに、温水器の容量はその設置場所が天井裏ということもあってバスタブをためるだけの十分な給湯能力がないケースがほとんどです。」
「風呂に入ることが好きだっただけにそれは残念ですね」
「温水器のスイッチはバスルームの入口に赤いランプがつくように設置されています。シンガポールでは電圧が高いため、直接分電盤に接続されているため、水を使用する浴室の中には原則として電気コンセントを設けないようにしています。電気温水器のスイッチを消し忘れたりすると、いつもお湯が沸いている状態のため、故障の原因になりかねないので注意してください。もうひとつ注意しなくてはならないことがあります。バスタブの排水口を見てください。ここの栓はホテルによくあるようにバスタブの縁についているまるいこの部分を左右に回してバスタブの栓を上げたり、下げたりするようになっています。この部分は非常に壊れやすです。」
「それではどうすればよいのですか?」
「一番簡単な方法はこの栓を最初からはずして、日本で使われているような鎖のついているゴムのキャップをスーパーマーケットから買って使うのが一番です。バスタブだけでなく、洗面所なども同じです。」
第5回 コンドの家具について
「部屋の中に家具が全くありませんが、家具はどうすれば良いのですか?」
「おそらく、このユニットは以前欧米系の人が家具なしで借りていたのでしょう。シンガポールの住宅は基本的な設備を備えたパーシャリーファーニチャーか、一般的に家具付と言われるファーニッシュのいずれかで賃貸借が行われています。パーシャリーファニチャーとは、カーテン、エアコン、天井照明、冷蔵庫、洗濯機までが備え付けられている状態を言い、主に欧米人の人たちが自分たちの家具を持ち込むときにはその状態で借りることになります。一方日本の駐在員の方々はほとんど家具付をご希望されますので、パーシャリーファニッシュのベースにソファーセット、ダイニングセット、サイドボード(テレビ台)、テレビ、食器棚、ベッド、ベッドサイドテーブル、勉強机とイスなどを含めたファーニッシュ(家具付)でお借りになる方がほとんどです。当然家賃はパーシャリーファニッシュとフルファーニッシュでは違ってきます。」
「家具付の場合のほうが家賃は高くなるということですね。」
「そうです。もとの家具の状態にもよりますが、500ドルから場合によってはそれ以上家賃が上がることもあります。」
「もし、家具がある場合、気に入らなかったら交換などは家主さんにお願いすることができるのですか?」
「もし、その家具や電気製品が古かったりするような場合は当然要求できますが、賃貸は家具だけの問題ではなく、家賃の額、いつから家賃の支払いが行われるのか、その他に追加の家具の要求があるかどうか、法人契約か個人契約、その他の契約条件などとの兼ね合いになります。また、家具の交換については家主さんがまだ使えると思っているような場合、撤去した後に保存する場所がないことを理由に断られてしまうこともありますので、ケースバイケースであるといえるでしょう。」
「乾燥機とか電子レンジなども要求できるんですか?」
「条件次第で家主の対応は違ってきますが、電子レンジ、乾燥機、ビデオデッキ、ファックスといった電化製品はオプションとして一般的に必要な家具とは区別して取り扱われる傾向があります。ビデオデッキ、ファックス電話などはかなり一般的なものとして普及してきていますが、一方で壊れやすいため、壊れたときに家主が使用方法が間違っていたとして修理費の負担を拒否したり、またテナントが退去した後に、壊れていたとして敷金から差引きの対象に加えたりするなどいろいろトラブルのもとになることが多くあります。」
「なるほど、そうすると家主さんにお願いする場合にはあまり壊れやすいものは要求しないほうが無難ということですね」
「そうですね。冷蔵庫とか洗濯機などは日常生活に絶対必要なものですから、今あるものがあまりにも古い時は交換を要求したほうが良いでしょう。一旦賃貸借契約が始まってしまいますと、家主さんは壊れたときはなるべく修理して使い続けるようにしますので、最初に要求することが肝心です。」
「なるほど、いろいろ家具を取り揃えてもらうより、絶対必要なものにポイントをおいて、交渉をすることが大事ということですね。」
第6回 オーナーチェンジ
「先ほどもお話しましたが、投資目的で所有している家主が多いため、不動産が値上がりするとすぐ売ろうとする家主を多いです。1995~96年ごろはシンガポールも不動産バブルで、2年の賃貸借期間中に家主が3人も代わったケースもありました。」
「私達が住んでいても売ってしまうんですか?」
「賃貸借契約が売買契約より先に成立していますから、法的には追い出されることはありませんが、契約書には、通常、家主さんがその家を売ろうとする場合、借主はその家を見せなくてはいけないと書いてあるのです。」
「途中で家主さんが代わった場合の注意点は何ですか?」
「交渉の結果、前家主さんが了解したことはなるべく、前家主さんにやってもらうということです。新家主さんは、それは前家主さんとの約束だから自分は関係ないとして、約束を果たさないことがあります。したがって、大切なことは必ず書面に書いて、両者が署名し保存しておけば、売買とともに賃貸借関係も引き継がれますから、新家主さんがやってもらえる可能性も高くなります。重要事項や連絡は書面で残すことが必要です。最重要項目は書留(レジスタード・メール)で送っておいたほうがよいでしょう。
「また、新家主さんから突然翌月分の家賃を自分宛に振り込むよう依頼されることがありますが、絶対に従ってはいけません。シンガポールでは不動産売買には必ず弁護士が関与しますので、弁護士からの書面による連絡にまず従うようにしてください。そうしないと、家賃を受け取っていない、支払ったと言うトラブルの原因にもなります。」
第7回 敷金の件とインベントリーチェックは重要
「日本では敷金、礼金、更新料、仲介手数料といったお金をテナントが払わなくてはなりませんがシンガポールではどうなんでしょうか?」
「シンガポールでは基本的には敷金は賃料の2ヶ月相当分(法人家主のケースで3ヶ月分相当ということもある)で、入居前にその敷金と最初の月の賃料を前家賃として支払わなければなりません。しかし、礼金とか更新料は必要ありません。不動産仲介手数料も家主が支払うようになっています。」
「そうするといろいろご案内いただいても私は仲介手数料を支払うことはないのですね。」
「一般的にはそうですが、家賃が2500ドル以下の場合や契約期間が1年以下の場合などに限定され、テナントさんから仲介手数料をいただくことが通例です。」
「入居時に支払った敷金などはかえってくるんですか?」
「敷金については基本的には返却されますが、いくつか注意しなくてはいけない点があります。まず、入居の時に最初からキズや不具合がある場合は必ず記録をとっておいて家主さんに知らせておくということです。これから入居する山田さんの場合、引き渡し時にインベントリーチェックという家具やカギなどの備品確認記録をつくります。この記録は単に家具があるなしではなくて、テナントさんの物件をどのような状態で渡されたかという証拠になりますので、この記録にキズとか不具合を明記しておかなくてはなりません。そうしないと後で家主さんに返すときに記録がないということで、その修理代を敷金から差し引かれる場合があります。よく起こるトラブルはテナントさんが最初からあったキズ、不具合でも住むのに支障がないということで記録をとらないでいたことが、後になって特に家主さんがかわってもとの状態がわからないときなど、家主さんからその修理代を請求され、テナントさんとの間でその差し引きを巡って、トラブルになります。」
「そうすると、住んだ後でも何か問題があるときにはいつも家主さんに連絡をしておくことが無難ですね。」
「そのとおりです。その連絡は前にも申し上げましたように必ず記録として残しておくことが必要です。」
第8回 サービスアパートのメリット
「自分たちだけだと間取りとか、立地ばかりに目がいってしまいますが、家主さんとの関係にもっと注意をしないといけないということですね」
「そうですね。サービスアパートのように一棟同じ法人家主というようなケースは将来発生する問題は個人家主より少ないといえます。」
「サービスアパートって何ですか?」
「もともと短期・中期滞在者向けに開発されたものです。ホテルのように部屋の清掃、タオルなどの交換、食器洗いをしてくれる他、最初から生活に必要な食器、キッチンウエアが揃っていてすぐに生活ができるような物件です。」
「でも、私のように家族が来て、2~3年すむような人向きではないですね。」
「そうですね。一般の物件と比べて面積も狭い割りにサービスがついている分、家賃が割高になります。でも、平日昼間は管理スタッフが常駐しているため、何かトラブルが起きた場合すぐに対応してくれます。サービスアパートの最大のメリットは家の問題でシンガポール生活をわずらわされないということです。しかし、サービスアパートの3ベッドルームは数が限られている上、面積が大きくなるので家賃も上がりますので、山田さんのようにご家族で3ベッドをお探しの方には向いてないかもしれません。」
第9回 レターオブインデントは重要
山田さんはやっと自分が気に入った物件を決めることができました。
「おかげさまで、ようやく良い物件が見つかりました。」
「いやいや、これからが本番ですよ。」
「これからが本番というのは、これから山田さんのご希望条件を家主と交渉しなくてはなりませんので、どこまでその条件を勝ち取ることが出来るかがポイントです。まず、交渉のたたき台としてレター・オブ・インテントという賃借申込のドラフトを相手に提出し、それに基づいて賃貸条件の詰めを行います。合意できた時点で最終的なレター・オブ・インテントに署名し、同時に賃料の1ヶ月相当分のお金を予約金として家主に渡し、家主さんの署名をもらいます。この時点でその物件を押さえることができます。よく日本では保留という形がとられますが、シンガポールでは基本的にこの予約金をいれなければ物件を抑えることができません。」
「もし、途中で気が変わった場合は取り消すことができるんですか」
「このレターオブインテントにはSUBJECT TO CONTRACTという文言が必ず入っています。この意味は契約書が最終的なもので、このレターオブインテントは最終的なものではないという意味です。」
「ということは、払ったお金は戻ってくるということですか?」
「その部分については法的に取り決めはなく、レターオブインテントでの記述によります。また、他の業者さんの場合、なにも記述がないケースなどは、市場慣行として家主が没収してしまうこともあります。そういった意味でこのレターオブインテントは法律的には拘束力は契約書ほどではないにしても、実務上ある程度拘束力があるので慎重に内容を検討しなくてはなりません。」
「もしSUBJECT TO CONTRACTと言う文言がレター・オブ・インテントの中に入っていないとどういうことになるのですか?」
「その文言が入っていないとそのレター・オブ・インテントが契約書と同等の効力を発行することになり、途中で気が変わったからといって契約条件などぜったいに変更ができなくなります。」
「そうするとレター・オブ・インテントが契約書ということになるのですね。」
「その通りです。一方でSUBJECT TO CONTRACTという文言がある場合には必ず契約書を締結しなくてはいけなくなります。特に更新のときなどは簡単に済ませようとしても、この文言がある場合には契約書を締結する必要があることに注意しましょう。」
第10回 レター・オブ・インテントの中味
「レター・オブ・インテントは契約の要旨と佐藤さんはおっしゃいましたが、その他にはどんなことを書かないといけないのですか?」
「レター・オブ・インテントの内容を規制する法律はありません。あくまでも当事者間で合意されたことを確認するものですので、内容がかなり簡単なものから細かく書かれているものまでいろいろあります。後で言った言わないのトラブルを避けるためにかなり詳細に記述したほうが良いと思います。絶対に記載されていなくてはならない内容は、
- 物件の所在、
- 家主の名前、連絡先、
- 賃借人の名前、住所、居住者の名前
- 契約期間
- 賃料、敷金および主要契約条件
この主要契約条件の書き方が不動産業者によってかなりラフなものから詳細なものまであります。ちなみに弊社では賃料に家具、共益費、駐車場使用料、GSTが含まれているかどうか、引渡日と賃料起算日が同じかどうか、毎月の賃料の支払い方法、契約延長の可否、中途解約の可否と条件、電気ガス水道などの光熱費の負担、テレビラジオライセンスの負担、エアコンの保守点検の負担、小修繕費の扱い、ケーブルテレビの扱い、印紙税の負担、契約準備にかかわる弁護士費用の負担、付属家具一覧、その他清掃、大理石磨き、壁の塗り替えなどの条件、契約までの必要費用の支払いスケジュールといった、なるべくトラブルを避ける意味で細かい内容になっています。」
第11回 家具の購入予算をもらう
「このレター・オブ・インテントで特に日本人のお客様の皆様が気にされるのが家具です。弊社では不足している家具や買い換えてほしい家具についてお客様ご自身で家具を選ぶことができるように家主さんに家具購入の予算を貰うようにしています。といいますのも、家具はかなり趣味の問題があるということと、家具の質によってかなり値段が違ってきますので、家主さん任せにすると、時として引き渡された時に予想と全然違う家具が入ってくることもあり、トラブルのもとになるからです。」
「自分で家具を選べないときもあるんですか?」
「ええ、時々家主さんがなるべく賃貸の経費を安くしようと考えている時には購入の予算がかなり低かったり、お客様の好みの家具が選びにくいような時もあります。このような時は家具の質がさほど良くなくてもその物件を選びたいかどうかのご判断をお客様にお願いしなくてはなりません。従って家具についての家主さんの対応によってはその物件をあきらめなくてはならない場合もありますが、気に入らない家具を入れられるより他の物件を選んだほうが後々快適に暮らす上では重要なことと思います。」
第12回 中途解約 ディプロマティック・クローズ
「シンガポールでは日本と違い、賃貸借契約の中途解約は認められません。しかし、一方でほとんどの外国人が本国から駐在ベースで派遣されてきています。そのため、突然転勤で本国に帰ったり、他国に転勤することもあります。このような時のみ中途解約が認められています。」
「ということは、住んでみて不都合があるからといって、その契約を解約して他の住宅に移るということは出来ないのですね。」
「その通りです。この条項の趣旨は住んでいる人の意思にかかわらず、シンガポールを離れなくてはならない場合のみ適用になります。また、この条項は、原則的にその住宅に12ヶ月以上滞在してから適用となります。さらに、退去予定の日まで2ヶ月の事前通知を書留(レジスターメール)で家主さんに発送しなくてはなりません。従って、最低14ヶ月分の賃料はどのような時でも支払わなくてはならないということです。但し、交渉次第で2年契約で拘束される14ヶ月分を短くすることも可能です。」
第13回 修理・修繕の支払い
「シンガポールではもともと電球の交換や配水管などのつまりなど使用者責任を取り決める条項が契約書に入っていることが通例で、現在大体100ドルから200ドルまで(契約によって異なります)の修理費用についてはテナントの負担とする条項が一般的なってきています。」
「その金額を超えた場合はどうなるのですか?」
「その金額を超えた場合は原則として家主さんがその差額あるいは、全額支払うのかが契約書の中に明示されています。ただし、入居後1ヶ月はすべて家主さん負担とするのが一般的です。」
「また、この取り決めは1箇所の修理費用ということですから、修理箇所が複数である場合は、1つの修理費用ごとにその費用が計算されますので、全部で取り決めの金額を超えているからといって、家主さんに負担を求めることはできません。」
「そうすると、ある程度は自分で修理業者に連絡をしなくてはならないということですね。」
「その通りです。また、修理費用が取り決めた金額(例えば100ドル)を超える場合には、必ず家主さんの同意をとってからでないと修理はできません。というのは家主さんは自分で知っている業者であればもっと安くできるから、山田さんが依頼する業者ではなく、自分の業者を使いたいと言いだすことがあるからです。ですから、家主さんの了解なしに取り決めた金額以上の修理をした場合には全額テナント負担ということもあり得るため、事前の連絡は必ず必要です。」
第14回 契約書
シンガポールでは日本のような借地借家法というテナントを保護するような法律は基本的にはありませんので、家主さんと結ぶ契約書がすべてです。内容として、賃料、敷金の金額と契約期間などの日付、家主の名前と住所、借手である自分の会社名と住所、借りる物件の住所が基本です。契約書の構成はこの基本事項の後に、テナントの義務、家主の義務そして双方が守らなくてはならない一般条項の順に記載されています。一般的にテナントの義務の分量は家主のそれより圧倒的に多いのですが、家主の義務もしっかりと明示されているかを確認することが必要です。また、レターオブインテントに書かれてあることがちゃんと契約書に入っているかも確認する必要があります。但し、日本でもそうですが、家主が法人の場合には必要以上にきびしく書かれていることがありますが、実務上あまり気にすることはないと思います。
第15回 エアコンメンテナンス
エアコンの水漏れがシンガポールの中で最も多いトラブルです。日本は室外機が室内機のすぐ近くの外側に設置されているため除湿した水もすぐ排水できますが、シンガポールの場合、除湿した水を排水するドレー管が天井裏の梁や配管の上下に長く通っているため、ちょっとしたごみがつまっただけで、除湿した水がうまく流れず逆流してしまい、水漏れの原因となることがよくあります。それを防ぐために、エアコンの定期点検が必要となります。契約書の条項の中にも家主またはテナントのどちらが定期点検をするかが必ず明記されています。通常2または3ヶ月に1回専門の業者が定期点検とクリーニングをします。
第16回 水漏れのトラブル
日本では給配水管を床下で処理しているのに対し、シンガポールでは給水管が銅でできており、しかも壁の中に埋め込みとなっているケースがほとんどです。そのため、水漏れが起きた場合、壁を壊して水漏れの場所を突き止めなくてはならず、修理にかなりの時間がかかります。水漏れの原因は、メイド部屋や使わないトイレなどがあると、その給水管の中の水が滞留し、銅の腐食を促進し、管にヒビが入ったり、浴室の床の防水加工が十分でなかったり、排水溝周辺部からの水漏れなど様々です。さらに浴室の天井裏のウォーターヒーターからの水漏れもよくあります。ウォーターヒーターの耐用年数をオーバーしてタンクに亀裂が入ったり、ウォーターヒーターの給水管も銅製のため使用していないバスルームのヒーターの給水管が腐食して水が漏れてくる場合もあります。天井からの水漏れの場合、上の階のトラブルが原因であれば、家主さんから上の階の家主さんへ連絡してもらい修理を依頼しなくてはならず、場合によっては修理作業がなかなか進まないケースもあります。もちろん修理費用は家主さんもちですが、水漏れを放置したままにすると、床や壁の損傷がひどくなりますので、すぐに家主さんに連絡することが必要です。そうしないと、すぐ連絡がなかったから損傷がひどくなったとしてテナントさんがその責任を取らざるを得なくなることも起こりうります。
「万が一、夜シャワーを浴びようと思った時にウォーターヒーターに亀裂が入り、大量の水が天井からいきなり降ってきた場合はどうするのですか?」
「まず、セキュリティーに行って、そのユニットの大元の給水のバルブを閉めてユニット全体の給水を止めてもらいます。止めてからタンクの水が全部流れでるまで待った後水漏れが起きたバスルームの天井の点検口を開けてウォーターヒータータンクにつながっている給水のバルブを閉めてください。最後に先に閉めた大元の給水バルブを開ければとりあえずバスルーム以外の給水は使えますので大丈夫です。」
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